
もっと余裕を持つはずだったのに!
気がつくと、6ヶ月のインドビザが切れる日が
3日後にせまっていた。
3日後には、インドの東端のカルカッタからの
飛行機に乗らねばならない。
なのに私がいたのはインドの西のデリー。
あわててデリーからカルカッタまでのチケットを買う。
逆三角形をしたインドの、角から角まで横断するわけだ。
もちろん30分遅れで出発する。
もちろん誰も動じない。
デリーを出てから10時間もすると、
列車の水タンクは空になる。
当然トイレの水もない。
あせる私に隣のおじさんが、
“Don't worry madam, I provide you water!"
(ご心配なくマダム、私が水を準備しますから!)
と高らかに叫ぶ。
そして、列車が止まるたびに、ペットボトルをつかみ、
ホームの水道に走って水を持ってきてくれた。
しかも列車は各駅停車。しょっちゅう止まるから
しょっちゅう水を汲みに走る。
なんて頼もしい。
列車に外国人は私ひとり。
そのおじさんはベンガル州(カルカッタが州都)の人で、
私と同じ年の娘がいるのだと話してくれた。
「インドでは女性ひとりで旅をするなんて考えられませんよ!」
つい娘のことが頭によぎるのか、
こんな無鉄砲な外国人に世話をやかずにはいられなかったのだろう。
別れるときにお礼をいうと、
「お礼はいらない。そのかわりにベンガル語
(ベンガル地方の言葉。インドは他言語国家だ)
を学ぶと約束しなさい」と力強く念を押される。
デリーからカルカッタまで33時間のはずが、
結局38時間後に到着。
絵の一枚や二枚描けちゃうわけだ。
インドの列車は、一度停車してしまうと、
平気で一時間も二時間も動かなくなるのが日常茶飯事。
しかし、イライラしている様子の人がひとりもいない。
じたばたしている自分にふと気づいて空しくなる。
あきらめて、「インドインドインド・・・」と、
いつもの念仏を唱えて乗り切る。
ラクチンとはほど遠かったけど、
退屈ともほど遠い、最高の六ヶ月だった。
インドを好きかどうかは、
love か hate のどちらかで中間がないとよく言われる。
私は、たぶんインドを嫌いになる人と同じ理由で、
インドが大好きなんだと思う。
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by shantiriot
| 2007-09-27 21:19
| 初インド旅エッセイ