2007年 09月 27日
インド北部 バシシュト(2003)

インドの北の北、ラダック地方へ向かう出発地点、
マナリの近くにバシシュトという村がある。
30分くらい森の中を歩いていくと、
岩肌を這うような、絵に描いたような美しい滝が突然現れる。
滝まで歩いて、
または馴染みのレストランの屋上で、
だらだら「滝に行く話」を一日中して、
夕方になると、村のど真ん中にあるヒンズー教のお寺の中にある温泉に入る、
というのが日課だった。
旅先で強烈なキャラクターにはたくさん会った。
なかでもトニーはすごかった。
インド在住25年のスウェーデン人で、
太極拳の先生。京都に住んでいたこともある大の日本好き。
日本の有名な尺八奏者がくれたという尺八を大切にしていた。
彼の演奏の巧みさに敬意を表してわざわざ作ってくれたんだそうだ。
中国の占いで、
コインを投げて占う「イーチン」を100%信じていて、
全てはそのお告げに従って25年間生きてきた。
「イーチンは、いつでも正しかった」きっぱり断言する。
この絵を描いた日、何人かいっしょに滝に行った。
トニーのいたゲストハウスの犬が、妙に彼になついていて、
滝までちゃっかりお供をしていた。
帰り道、激しい夕立ちに見舞われ、
転び続けて泥まみれになった。あまりに雨が気持ちよくて、
みんなびしょぬれのまま大笑いしながら
帰ってきた。犬もびしょぬれのまま実に楽しそうにくっついてきた。
そのまま寺の中にある温泉に直行。
すっきりしたあと、トニーの部屋に全員集合。
イーチンのお告げに従い、
トニーがデリーで買ってきた絵の具で、
5人いっせいに絵を描いた。
こんなにすっきりしたのは久しぶりだった。
見せるために表現するのではなくて「出す」ことが必要だったんだ、と思った。
出していいんだ、と思ったら自分でもびっくりするくらい楽になった。
「イーチンが絵の具を買えと告げたのは、
君のためだったんだよきっと。」
トニーに言われた。
中に渦巻くものは、出したほうがいい。
簡単だけど大切なこと。
彼は今でもフルパワーで、インド各地で太極拳の指導にあたっている。
by shantiriot
| 2007-09-27 20:01
| 初インド旅エッセイ